総務省データで読み解く日本のIT利用実態|PC保有率・生成AI・ネット利用の全体像

- 「スマホがあれば十分」
- 「パソコンはもう不要」
そんな声を耳にする機会が増えた一方で、実際の統計データを見ると、日本のIT利用環境はそれほど単純ではありません。総務省の最新調査では、スマートフォンの普及が頭打ちになる中、パソコン保有率は下げ止まりの兆しを見せ、さらに生成AIの利用率はわずか1年で約3倍に急増しています。
このような変化は、単なるデバイスの流行ではなく、「何に使うか」という利用目的の変化によって引き起こされています。特に生成AIの普及は、これまでスマホ中心だったインターネット利用の在り方を大きく変えつつあります。
今回は、2024年までの最新統計データをもとに、日本のインターネット利用・PC保有率の現状を整理するとともに、2026年に起こり得る変化、AI普及によるPC需要の再評価や、デジタル格差の拡大について、解説します。

【2023年→2024年】日本のIT利用動向まとめ|デバイス・AI・働き方の変化
| 統計項目 | 主要な指標・トピック | 2023年 | 2024年 | 属性・詳細情報 |
|---|---|---|---|---|
| 世帯の情報通信機器の保有状況 | スマートフォンの保有率 | 90.6% | 90.5% | パソコン(66.4%)や固定電話(54.9%)を上回る。世帯主20代〜60代で90%超。 |
| パソコンの保有率 | 65.3% | 66.4% | 前年比1.1ポイント上昇。世帯年収600万円以上の世帯で70%以上。 | |
| インターネット利用状況 | インターネット利用者の割合(個人) | 86.2% | 85.6% | 13歳〜64歳の各層で9割超。30代が98.8%で最高。80歳以上は33.1%。 |
| インターネット利用経験(世帯単位) | 88.8% | 88.6% | 世帯主30代世帯が98.7%で最高。75歳以上世帯は64.0%。 | |
| 生成AI利用状況 | 個人の生成AI活用状況 | 9.1% | 26.7% | 前年から約3倍に上昇。20代は約44.7%が利用経験あり。米国(68.8%)等よりは低い。 |
| 企業の生成AI活用状況 | 約43% | 約50% | 大企業は約56%、中小企業は約34%にとどまる。 | |
| テレワークの実施状況 | テレワーク実施率(勤務者) | 27.1% | 28.1% | 30代(36.7%)、40代(33.8%)で高い。実施形態は「在宅」が92.8%で最多。 |
2025年以降は生成AIの急速な普及により、個人のIT利用構造が大きく変化する可能性が高いと考えられます。
生成AIの利用率はさらに急拡大する見込み
2024年時点で、日本における生成AIの利用経験は26.7%と、前年の9.1%から約3倍に増加しました。この伸び率を踏まえると、2025年〜2026年にかけては以下のような変化が予測されます。
特に20代・30代の若年層では、すでに半数近くが利用経験を持っていることから、「使ったことがある」から「日常的に使う」段階へ移行していると考えられます。
スマートフォン中心から「AI×PC活用」へシフト
これまでのインターネット利用はスマートフォン中心でしたが、生成AIの普及により状況は変わりつつあります。
理由はシンプルで、
生成AIは「長文入力・複雑な操作・複数作業の同時進行」が求められるため、PCの方が圧倒的に効率が良いからです。
そのため今後は、
というように、用途によるデバイスの使い分けが明確化していくと予想されます。
デジタル格差は「AI格差」としてさらに拡大
一方で注意すべきなのが、格差の問題です。
すでに統計上でも、年収や年齢によってIT利用やPC保有率に差が見られますが、今後はそれがさらに顕著になります。
特に重要なのは、単なる「利用の有無」ではなく、
- AIを使いこなせる人
- AIを使わない(使えない)人
というスキル格差(=AIリテラシー格差)です。
この差はそのまま、
- 仕事の生産性
- 情報収集力
- 収入機会
に直結するため、今後の社会において極めて重要な要素になると考えられます。
PC保有に関する統計

総務省の「令和6年通信利用動向調査」によると、世帯主の年齢階層別で見たパソコン保有率の推移(令和2年〜令和6年)は以下の通りです。
世帯主の年齢階層別パソコン保有率の推移(単位:%)
| 年齢階層 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 70.1 | 69.8 | 69.0 | 65.3 | 66.4 |
| 20~29歳 | 70.3 | 73.7 | 71.0 | 65.7 | 69.2 |
| 30~39歳 | 76.0 | 76.1 | 73.6 | 68.3 | 71.1 |
| 40~49歳 | 81.5 | 81.0 | 77.0 | 75.1 | 76.0 |
| 50~59歳 | 81.1 | 81.3 | 80.0 | 75.5 | 76.5 |
| 60~69歳 | 70.5 | 72.2 | 72.9 | 71.1 | 69.6 |
| 70~74歳 | 62.0 | 60.7 | 63.5 | 58.3 | 61.6 |
| 75歳以上 | 47.0 | 47.5 | 48.5 | 45.1 | 45.2 |
パソコン保有率は「微増または下げ止まり」に転じる可能性
一時的に低下傾向にあったパソコン保有率ですが、生成AIの普及により再評価が進む可能性があります。特に以下の層で変化が起きやすいと考えられます。
- 在宅ワーク・副業を行う層
- 学習・リスキリングを行う層
- 企業でAI活用を求められるビジネスパーソン
2025年は「大幅増加ではないが、下げ止まり〜緩やかな回復」という現実的な推移が想定されます。しかし、2026年はPCパーツの高騰によりパソコン市場全体の回復ペースは一時的に鈍化する可能性があります。
働き盛り世代の高い保有率
40代および50代の世帯主がいる世帯では、依然として75%を超える高い保有率を維持しています。この層は全世代の中でも最もパソコンを保有している割合が高いグループです。
60代前半までの普及
令和6年時点では、30代から50代、および60〜64歳の各年齢階層において、パソコンの保有率が70%以上となっています。1990年代中盤以降にPCが普及率が一気に伸びたことを考えると計算が合います。
若年層の動向
20代(世帯主)の保有率は、令和5年に65.7%まで落ち込みましたが、令和6年には69.2%へと回復傾向にあります。
高齢層の状況
75歳以上の層では保有率が45%程度にとどまっており、他の世代と比較して低い水準にあります。
インターネット利用との関係
個人単位での利用機器を見ると、全年齢階層で「スマートフォン」の利用率が「パソコン」を上回っていますが、パソコンも依然として重要なインターネット接続機器として利用されています。特に職場でインターネットを利用する割合が高い30代から50代の男性など、特定の層でパソコンの利用場所として「職場」が挙げられる割合が高くなっています。
世帯年収別のパソコン保有率(令和6年調査)
- 200万円未満: 35.6%
- 200〜400万円未満: 57.7%
- 400〜600万円未満: 69.8%
- 600〜800万円未満: 78.6%
- 800〜1,000万円未満: 85.3%
- 1,000〜1,500万円未満: 87.3%
- 1,500〜2,000万円未満: 94.3%
- 2,000万円以上: 93.1%
高年収世帯での高い保有率
年収600万円以上のすべての階層において、パソコンの保有率は70%を超えており、年収1,500万円以上の世帯では9割以上に達しています。
低年収世帯との格差
年収200万円未満の世帯(35.6%)と年収1,500〜2,000万円未満の世帯(94.3%)を比較すると、保有率には約2.6倍と、大きな開きがあります。
インターネット利用との関連
世帯年収が高いほど、パソコンだけでなくインターネット自体の利用経験率も高くなる傾向にあり、年収400万円以上のすべての階層でインターネット利用経験率は95%を超えています
地方別のパソコン保有率(令和6年)
総務省の「令和6年通信利用動向調査」によると、地域別のパソコン保有率には明確な差が見られます。全国平均の世帯保有率が 66.4% であるのに対し、地方別では以下のような状況です。保有率が高い地域は関東や北陸に集中しており、一方で北海道や四国、九州・沖縄などは平均を下回っています。
- 保有率が高い地域(70%以上):
- 南関東(埼玉、千葉、東京、神奈川):72.0%
- 北陸(富山、石川、福井):71.7%
- 平均的な地域(60%台):
- 東海:67.6%
- 近畿:67.2%
- 中国:64.2%
- 甲信越:62.6%
- 北関東:61.0%
- 九州・沖縄:60.8%
- 東北:60.0%
- 保有率が低い地域(60%未満):
- 北海道:59.4%
- 四国:58.0%
個人のインターネット利用率に見る地域差
世帯保有率だけでなく、個人(6歳以上)のインターネット利用率においても地域差が報告されています。利用率が全国平均(85.6%)より高い地方は、南関東、東海、および近畿です。
都道府県別で見た場合、利用率が特に高いのは以下の県です(上位順):
- 福岡県・神奈川県(90.1%)
- 東京都(89.3%)
- 兵庫県(89.1%)
- 埼玉県(88.4%)
一方で、岩手県(72.2%)や青森県(75.4%)などは利用率が低めとなっており、IT端末の活用状況に地域的な偏りがあることが示唆されています。
過去との比較
かつて(令和2年頃)は甲信越地方が 80.5% と非常に高い保有率を誇っていましたが、令和6年には 62.6% まで低下しており、地域によって普及のピークや減少の度合いが異なります。
都市部の傾向
南関東など、企業や教育機関が集中する都市部を含む地域では、依然としてパソコンが重要な情報端末として高い保有率を維持する傾向にあります。
今後の予測
2025年・2026年に向けては、
- 生成AIの利用率は急拡大(過半数へ)
- PCは「不要な端末」から「生産性ツール」へ再評価
- スマホとPCの役割分担が明確化
- デジタル格差は「AI格差」として拡大
という構造変化が進む可能性が高いです。
今後は単に「インターネットを使えるか」ではなく、
「AIを使って何ができるか」が問われる時代に入っていくと言えるでしょう。
- 生成AIは「スマホよりPCの方が効率が良い」ため、
→ ビジネス用途ではPC回帰が起こる可能性 - 一般層はスマホ依存が継続
→ “PCを使う人・使わない人”の二極化 - 年収・教育・職業による格差はさらに拡大
→ すでにデータ上でも相関あり - 企業はAI活用を前提に人材評価へ
→ PCスキル=生産性の差に直結
出典: [1] https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202400_001.pdf [2] https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/summary/summary01.pdf
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